多摩川全踏破|河口から最初の一滴を目指して歩いた4日間

その他

はじめに|東京湾から源流へ、多摩川を遡る旅

多摩川は東京湾へと注ぐ全長138kmの一級河川だ。

普段は河川敷を散歩したり、橋の上から眺めたりする存在だが、その水がどこから来ているのかを意識する機会は少ない。

今回挑戦したのは、多摩川の河口から源流である笠取山の水干まで、自分の足だけで辿る旅。

4日間に分けて、多摩川の流れを逆に追いかけながら歩いた。

海辺の都会から山深い源流域まで。
一つの川のすべてを見に行く旅の始まりである。


行程概要

1日目

河口 ~ 立川駅

2日目

立川駅 ~ 奥多摩駅

3日目

奥多摩駅 ~ 丹波山村役場

4日目

丹波山村役場 ~ 笠取山 ~ 水干

総距離は150kmを超える。

河川敷歩き、国道歩き、山間部の縦走、そして最後は登山。

単なるロングウォークではなく、多摩川の成り立ちを体感する旅となった。


1日目|河口から立川駅へ、海から始まる多摩川の旅

旅のスタートは東京湾に注ぐ多摩川河口。

目の前には広大な水面が広がり、川というより海の景色に近い。対岸には羽田空港が見え、飛行機が次々と離着陸していく。ここから笠取山まで続く長い旅を思うと、期待と不安が入り混じった気持ちになった。

河口付近の多摩川はとにかく大きい。川幅は広く、水の流れも穏やかで、これが源流から流れてきた水だとはなかなか想像できない。

歩き始めると、景色は住宅地や工業地帯へと変わっていく。堤防の上をひたすら歩きながら、多摩川が東京と神奈川の境界を形作っていることを実感する。

六郷橋、多摩川大橋、丸子橋など、数多くの橋を眺めながら進む時間も楽しい。普段なら電車や車で一瞬にして通り過ぎる場所も、自分の足で歩くとまったく違って見える。

二子玉川周辺では人の姿も多く、ランナーやサイクリスト、散歩を楽しむ人々で賑わっていた。多摩川は単なる川ではなく、多くの人の日常を支える場所でもあるのだと感じる。

しかし、立川が近づく頃には足にも疲労が溜まり始める。平坦な道とはいえ、一日中歩き続けるのは想像以上に体力を使う。

それでも、河口からここまで自分の足で繋げたという達成感は大きかった。

翌日はいよいよ、多摩川が少しずつ山の川へと変わっていく区間へ向かう。


2日目|立川駅から奥多摩駅へ、多摩川が「東京の川」から「山の川」へ変わる

2日目は立川駅から奥多摩駅を目指す。

朝の多摩川は昨日と変わらず穏やかだが、歩き始めてしばらくすると少しずつ景色が変化していく。

拝島を過ぎる頃には市街地の密度が下がり、川沿いに広がる自然が増えてくる。河川敷の広々とした景色は相変わらずだが、遠くには山並みが見え始めた。

青梅周辺では川の流れも徐々に速くなり、水の透明感が増していく。

ここまで河口から歩いてきたからこそ、その変化がよく分かる。

同じ多摩川でも、河口付近のゆったりとした大河とはまるで別物だ。

やがて奥多摩方面へ近づくにつれて谷が深くなり、川は岩場を縫うように流れ始める。

景色は完全に登山口へ向かう途中の雰囲気となり、東京とは思えない自然の豊かさが広がっていた。

そして到着した奥多摩駅。

ここまで来ると、河口で見た都会的な景色はすでに遠い記憶になっている。

多摩川を遡ってきたことで、一つの川が持つ多様な表情を体感することができた一日だった。


3日目|奥多摩駅から丹波山村役場へ、多摩川上流部を辿る

3日目は旅の雰囲気が大きく変わる区間だ。

奥多摩駅を出発すると、まず待っているのは奥多摩湖。

東京都の水道を支える重要な水源であり、多摩川の流れを語る上で欠かせない存在だ。

湖畔を歩きながら改めて感じるのは、水の豊かさである。

東京という巨大都市は、この流域の自然によって支えられている。

奥多摩湖を過ぎると、道はさらに山深くなっていく。

交通量は少なくなり、人とすれ違う機会も減る。

河口から歩き始めた時には絶えず人の気配があったが、ここでは静寂が支配している。

耳に入るのは川の流れる音と風の音だけ。

多摩川もさらに細くなり、渓流としての姿を強めていく。

透き通った水、苔むした岩、深い森。

河口で見た大河のイメージは完全に消え去り、源流へ向かう山の川へと変貌していた。

そして山梨県に入り、丹波山村へ到着。

人口千人にも満たない小さな村だが、多摩川源流域の重要な拠点である。

翌日はついに旅の最終日。

河口から追い続けてきた多摩川の始まりに会いに行く。


4日目|丹波山村から笠取山へ、水干沢を遡り多摩川の始まりへ

旅の最終日。

丹波山村役場を出発し、いよいよ多摩川の源流を目指す。

これまでの3日間は、多摩川の流れを追いかけながら舗装路や遊歩道を歩いてきた。しかし最終日は違う。目指すのは地図上の源流点ではなく、自分の足で水の流れを辿った先にある「最初の一滴」だ。

登山道を進み、水干沢へと入る。

ここからは沢沿いではなく、沢そのものを遡行していく。

河口で見た雄大な多摩川からは想像もできないほど小さな流れだが、確かにこの水が多摩川となり、東京湾まで流れていく。

沢の中を歩きながら、水の行方を追いかける。

小さな滝を越え、岩を乗り越え、時には水の中に足を入れながら高度を上げていく。

沢の水は驚くほど透明で、流れの音だけが静かな森に響いている。

ここまで河口から歩いてきたからこそ、この小さな流れが特別なものに感じられた。

普段の沢登りであれば地形やルートに意識が向くが、この日は違った。

「この一滴はどこから来ているのだろう」

そんなことばかり考えながら歩いていた気がする。

やがて沢はさらに細くなり、流れは小川から水筋へと変わっていく。

東京湾で見た広大な水面が、こんなにも小さな流れへと姿を変えることに驚かされる。

そしてついに水干へ到着。

岩の隙間から静かに滴る水。

派手さは何もない。

知らなければ通り過ぎてしまいそうな場所だ。

しかし、この場所こそが多摩川の始まりである。

河口から4日間かけて追い続けた川の旅は、ここで終わりを迎えた。

振り返れば、多摩川は場所によってまったく違う表情を見せてくれた。

海の匂いがする河口。

人々の暮らしと共にある中流域。

深い山々に囲まれた上流部。

そして最後は、水干沢の静かな流れ。

そのすべてが一本の川でつながっている。

沢の中で水に触れながら辿り着いた源流は、ただ登山道を歩いて訪れる以上に特別な場所だった。

多摩川の始まりは、確かにここにあった。

河口から源流まで歩いたから見えたもの

多摩川は単なる一本の川ではない。

都市の暮らしを支え、自然を育み、多くの人と関わりながら海へ向かう存在だ。

河口だけを見ても、源流だけを見ても分からない。

その全体像は、自分の足で辿って初めて見えてくる。

川幅が変わること。
水の色が変わること。
景色が変わること。

そのすべてが、多摩川という一本の川の物語だった。


まとめ|海と源流をつないだ4日間

河口から立川へ。
立川から奥多摩へ。
奥多摩から丹波山村へ。
そして笠取山の水干へ。

4日間かけて歩いた旅の終着点には、多摩川の最初の一滴があった。

その一滴はやがて沢となり、川となり、東京湾へ辿り着く。

普段見慣れた多摩川も、その始まりを知ることで全く違って見えるようになった。

もし時間と体力があるなら、一度は河口から源流へ。

多摩川という一本の川の壮大なスケールを、自分の足で感じられる特別な旅だった。

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